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しば先生劇場 

遺伝病第1回 
新庄動物病院の今本院長先生が、遺伝病について
飼い主さん向けに、わかりやすくまとめてくださいました。  
今本先生、お忙しいのにありがとうございます。m(_ _)m     
飼い主さんにとっては、とてもためになるお話ですので  
お友だちの方にも読んでくださるように、紹介していただきたいと思っています。(*^_^*)  
感想なども寄せてくださいね。
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Subject: 遺伝性疾患第1回 (はじめに)

新庄動物病院 院長 今本成樹

  近年血統書のついた犬種が増えてきたことにより、 雑種犬というのを見かけなくなりました。
「雑種犬は強い!」という言葉を 皆さん一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
確かに雑種犬は強いのです。
遺伝学で言うところの「雑種強勢」というのがあるからです。
雑種強勢とは、生きていく上で、 強く生きるための情報を残していくということです。
遺伝的に弱い情報を持つのは封印されてしまいます。

で、強い形質だけが出るように都合よくできています。
「でも、病気になっていなくても  遺伝病が隠れているということがあります。
 さて、なんで隠れているのでしょうか?」
長い歴史の中で犬は用途に応じ改良されてきました。
特に犬種の歴史をざっと眺めれば、
1600年代以降に固定された犬種が 多く登場しているというのがわかるのではないでしょうか?
この時期は、 無理な繁殖を繰り返した時期だったのかもしれません。

遺伝病の歴史を考える時に本当に参考になるのが、
この時代以降に作り出された犬種に遺伝病が多く、
古代からの犬種には比較的少ないということです。
遺伝病が多いというのは、犬が病弱というのではなく、
狭い範囲での繁殖をくりひろげるうちに 遺伝子が固定されていったということです。
例えばシベリアンハスキーは、 限られた地域での繁殖を繰り返したことにより
遺伝的に認められる疾患が多いのです。

純血種は作り出される過程で、様々な犬種が使われています。
ダックスを例にあげさせていただきます。
ダックスには スムースヘアー、ロングヘアー、ワイアーヘアーがあります。
それぞれ、スムースは、 古代の短脚のハウンド犬(現存しない犬種、ダックスやバゼットの祖先)と 初期のピンシャー(現在存在しない犬種)、 ダックス・ブラッケとの交配により誕生しました。
ロングヘアーは、 スムースにスパニエル系、アイリッシュ・セッターなどを異種交配、
ワイアーはテリア系、 ラフ・ヘアード・ピンシャーと 交配させることにより作り出されました。

ダックス同士での交配では、 様々な毛質の交配がおこなわれていますが、
毛質についての遺伝形式では、 ワイアーは、スムースにもロングにも優性で遺伝します。
また、スムースは、ロングに対して優性と言われています。
ロングは、他の犬種と掛け合わせたら常に劣性です。
また、お互いの毛質を大切にするなら、 ロングとワイアーは掛け合わせない方がいいです。
ロングヘアーにはスパニエル系が入っているので、
ロングを作り出す以前には少なかった目の疾患が スパニエルからダックスに入ってきています。

ダックスにスパニエル系が導入された時期から
スムースにも眼の疾患が増加傾向になったようです。
ロングに入ったスパニエルの持つ眼科疾患の遺伝的要因が
スムースという隠れ蓑でうまく隠されているとも考えられます。
このようにどの犬種でも 他の犬種が途中で入ってしまっているということで、
毛質により遺伝病をどう疑うかという傾向が異なります。
単純にダックスだから、というだけで、 考えるのは早計かもしれませんね。
別の犬種としての認識を持つくらいの気持ちが 必要ではないでしょうか。

  こうやって考えたら、 どこにどのような病気の情報が入っているのか?
ということをデータ的に解明していく必要が あるのではないでしょうか?
そうすることで、 今後不幸な子を減少させることって十分可能なはずです。
不幸な子を減少させることもそうですけど、
不幸になる飼い主さんを減少させるのも必要だと思います。
特別知識のない飼い主さんに対してそれをケアしていけるのは、
獣医師であり、ブリーダーさんであり、 そのデータを管理して意識向上の啓発を行うのは、
血統書発行の団体であるべきだと思います。
実際に病気について見ていきましょう。

「最初に陰睾についてです。」 大型犬・小型犬に限らないで、陰睾は遺伝性疾患です。
(犬種的に高い発生率を示すものもあります。) 小型犬に多いと言われていますが、
実際私は、土佐犬などでもよく見かけています。
精巣腫瘍は、雄犬の腫瘍で上位に認められるもので、
人を含む他の動物種よりも犬には多く認められています。
陰睾での腫瘍の発生率は、正常犬と比較して約14倍も高く、
腫瘍発生時の年齢も若いです。

右側の精巣の方が左側の精巣よりも発生率が高いです。
「陰睾は、常染色体劣性遺伝ですので、繁殖に用いないようにしましょう。」
ご存知のように陰睾は、 将来的な精巣腫瘍のリスクを増大させてしまいます。
片側の睾丸でも繁殖力はありますが、
その子供達は、 たとえ陰睾となっていなくてもキャリアとなっています。
遺伝的に陰睾となっている時には、
アンドロジェンや性腺刺激ホルモンによる治療を行うことも、 無意味とされています。
「陰睾の子が近くにいたら、その子はもちろん、 その親の繁殖を止めることは、  
有効な予防手段の一つとなるでしょう。」

こんな単純なよく見かけるものも きちんと見ると遺伝性のものっていうことが結構あります。
飼い主さん自身も注意すると同時に、 周りにそのようなことがあれば
知識のある人が説明していくことが、重要だと思います。
次回から希望によって、 様々な疾患を紹介していけたらいいと思います。
予定しましては、次回は眼の疾患。。。です。
人の遺伝病、全6000種類の中で2000種類が眼の疾患ですよ。
犬でも重要となってくるはずです。
そして思いっきり遺伝していることをご理解いただけると思います。

 新庄動物病院 院長 今本成樹

 

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